矯正歯科の基礎知識

 体の成長

顎の成長 矯正の診断 1 矯正の診断 2 矯正装置 歯の移動 外科矯正

矯正と成長

 矯正歯科 治療を考える上で、体と顎の成長はとても重要です。
成人の 矯正 治療ではあまり関係ありませんが、子供の 矯正 治療では特に重要です。

正常な顎の成長

体の成長

 正常な成長パターンにおいて、体の各組織は各々異なったスピードで成長します。
例えば、神経組織は6,7歳までにその成長をほとんど完了します。
一方、筋肉、骨組織、血管など全身組織は、幼年期のゆっくりした成長スピードと思春期の成長加速を特徴とします。 (Scammonの成長曲線)
          Scammonの成長曲線   

顎の成長

 頭部・顔面においても上記の影響を受けて、脳頭蓋と顔面頭蓋とでは発育成長の様式が異なります。
顔面頭蓋の成長発育は一般型を示しますが、脳頭蓋は神経系の成長発育を示して幼年期までにその大部分の成長が終了してしまいます。
従って、脳頭蓋底は出生時に最終成長時の60%、10歳児にはその95%の成長を示します。 一方、顔面頭蓋は出生時に40〜45%、10歳児にはその65%を示すにすぎません。
          脳頭蓋と顔面頭蓋の成長
脳に近い上顎骨は神経系に類似した成長曲線を示してより早く成長を終了する。 一方、脳頭蓋底からより遠くに位置する下顎骨はより一般型に近い成長曲線を示してより遅くまで成長を続けることが分かっています。
          上顎骨と下顎骨の成長パターン
一般的に、上顎は小学校低学年の時期に早く成長の加速を迎え、その成長が大きく見込まれます。
一方、下顎は骨自体も長管骨という身長が大きく伸びる時に大きくなる手足の骨と同じです。  したがって、遅く成長の加速を迎えて、より遅くまで成長が見込まれます。だいたい小学校高学年から中学校には下顎の成長の加速が始まり、思春期が終わるぐらいまで下顎の成長が大きく見込まれます。  骨格性反対咬合など基本的に下顎の成長が良すぎる子では、20歳ぐらいまで成長が続くこともあります。

成長の加速

 成長の一般的なパターンは変わりませんが、成長が加速する時期が変動することにより左右され、個人差が出ます。
          成長の加速、その個人差  
成長が早く早熟な子供の場合はその成長の完了も早く、一方で、ゆっくりと成長して早熟な子供に追いつく子供もいます。
一概に、ある年齢になったからある体の大きさになったから成長の加速を迎える、という杓子定規的なものではありません。

成長の加速の指標

 この成長の加速の指標として代表的なものに、性的な成熟、と、種子骨の石灰化 が有効な指標としてあげられます。

性的な成熟として、女子では、指標として初潮の発現が用いられます。  男子では、相応する有効な指標がありません。

手根骨のレントゲン写真上で種子骨の石灰化が認められたら、その1年後に思春期成長が始まる、というものがあります。
          手根骨のレントゲン写真
また、非常にアバウトな感覚で言うと、思春期成長による身長の伸びが見られたら、その半年以内に下顎の成長が認められるようです。

顎の成長モデル

頭蓋・顔面複合体の中でも、 矯正 治療の中心となる上顎(鼻上顎複合体)と下顎骨の成長モデルを説明します。

上顎骨の成長

上顎骨の成長 頭蓋庭と接している縫合部分での骨添加により、鼻上顎複合体として前下方に平行移動するように成長します。 同時に起こる上顎骨表面のリモデリング(上顎骨の前方面や鼻腔側では骨吸収、口蓋の部分では骨添加が中心になって生じる)により、上顎骨自体がそのサイズを増していきます。










下顎骨の成長

下顎骨の成長 下顎頭部における軟骨性骨形成により、前下方へ平行移動するように成長します。 同時に起こる下顎枝の部分のリモデリング(下顎枝前縁での骨吸収、後縁での新生骨による骨添加が生じる)により、下顎骨自体がそのサイズを増していきます。










顎の成長コントロール

 成長の決定因子として、従来より3つの考え方があります。

1.成長の遺伝的コントロールは、骨のレベルで直接行われる
2.成長の遺伝的コントロールは軟骨内で行われ、やがて骨に置換される為、2次的に受動的な反応をする。
3.成長の遺伝的コントロールは骨格系の外(骨を埋包する軟組織)にあり、他の組織からの信号に応答する形で骨や軟骨の成長が起きる。

Functional matrix theory

 この3番目の考え方は、Mossにより提唱された 『 Functional matorix theory 』 と言い、一番有力視されている成長に関する考え方です。

矯正 の領域に当てはめると、
頭蓋顔面部の発育・成長が、機能的な必要性に対する反応として生じ、顎骨を埋包する軟組織を介して伝達される、と言う仮説です。
上下の顎骨の成長を決定する因子は、体の発育に伴う機能的な要求により拡大する鼻腔と口腔であり、その周囲軟組織の成長による変化に対応して空間内を移動して、骨のりモデリングが起きると、考えられています。

矯正治療への応用

 顎の成長の余地がまだ残されている時期に、成長の舞台になっている所へ、整形力(orthopedic force)を加えることが必要です。

一般的に、小学校の低学年であれば上顎骨の成長が大きく見込まれます。
いわゆる出っ歯であれば、上顎骨の成長抑制を図る治療が、矯正治療に組み込まれます。
いわゆる受け口で上顎の列成長があれば、上顎骨の成長促進を図る治療が、矯正治療に組み込まれます。

一方、小学校の高学年から中学校にかけては下顎骨の成長が大きく見込まれます。
いわゆる受け口で下顎の過成長があれば、下顎骨の成長抑制を図る治療が、矯正治療に組み込まれます。

                                                    【ページのトップへ戻る】

Copyright (C) 2008 saa-dental clinic. All Rights Reserved

インプラント治療の背景となる基本的な事柄について説明しています。